昭和33年度の一橋大学受験生向けの世界史・人文地理の傾向と対策

1958年度(昭和33年度)の一橋大学受験生向けの赤本(教学社)に載っていた一橋大学の『傾向と対策』p 10~11の『世界史』、『地理』を載せてみる。

ただし、ブログ記事であるので、入力方法を変更したところがある。






傾向と対策

世界史


・30年度
問題番号1 内容:西力東漸とアジアの民族運動 時代:近代 地域:東西 形式:4設問へ記述解答
問題番号2 内容:重要事項の理解 時代:全時代 地域:東西 形式:類似事項の相異説明

・31年度
問題番号1 内容:近代化と農村事情 時代:封建→近代 地域:東西 形式:4設問へ記述解答
問題番号2 内容:仏教・科挙・均田制等 時代:全時代 地域:東西 形式:正誤訂正

・32年度
問題番号1 内容:勢力均衡 時代:近代 地域:東西 形式:4設問へ記述解答
問題番号2 内容:匈奴, 南北朝期の農村等 時代:古代, 近代 地域:東 形式:正誤訂正


 一橋大学の世界史は, 毎年, 程度が高く, 質のすぐれた問題が出されるので有名である。よく学ばせて, 深く考えさせる問題とは, 一橋大学の世界史のことである。

 毎年の出題傾向もきまっている。
① 問題は2題である。
② 第一問は近代史である。世界史が特に現代社会を理解するための教養として学ばれる意味から, 一橋大が近代を重視するのは当然であろう。
③ かなり高度な史論ふうの問題文を読ませて, まず, その意味をつかませ, その上でそれにしたがって問に答えさせる。答は論文形式で深く高い理解力が要求される。
④ 第二問は東洋史を主として, 各時代にわたり, 重要な歴史概念の正確な知識を要求している。形式は正誤法や比較法によっているが, 正誤の正しい文のばあいにも理由を述べさせるのは, この大学の特色である。

 このような傾向は, 一橋大が, 世界史において, 教養としての相当高度の世界史的知識を要求していることを示している。詰めこみ式のまる暗記によるひからびた知識では, この要求にはとうてい応じられるものではない。

 高く深い世界史的教養は, ゆたかな読書からのみ生まれるものである。それも, よくはたらく頭でつねに考えようとする態度で裏づけられていることを要する。教科書や受験参考書をただ読んで覚えようとするのではなく, 世界史上の個々の事実や, 重要な事象や, 歴史を動かす要因や, 歴史そのものの流れやなどを, つねに時代ごとに, また東洋と西洋とをくらべながら, 相互の関係を考えつつ, 徹底的に理解しておくことがだいじである。そのためには, できれば教科書や参考書だけでなく, 世界史関係の文庫本や新書本などをひろく読んで, へいそから世界史を考えながら教養を積んでおいたほうがよい。その上で, 教科書や参考書で知識を整理し, 理解をたしかめておけば完璧である。

 ゆたかな読書力によってきたえられた思考力と, 教科書, 参考書で整理された確実な知識とが, 一橋世界史を解答するかぎであろう。

人文地理

 問題数は2題, 形式は昭和30年からすべて説明問題となった。問題の分野は次に示すようであるが, いつも原理的なものに結びつけてある。


・30年度
基礎(地図:出題なし 気候:出題なし  地形:出題あり)
産業(農牧水林:出題あり 鉱工業:出題なし)
居住(人口:出題なし 村落:出題なし 都市:出題なし)
世界の結合(交通:出題なし 貿易:出題なし 国家:出題なし)
地誌:出題なし
総合:出題なし

・31年度
基礎(地図:出題なし 気候:出題なし  地形:出題なし)
産業(農牧水林:出題なし 鉱工業:出題なし)
居住(人口:出題なし 村落:出題なし 都市:出題なし)
世界の結合(交通:出題なし 貿易:出題なし 国家:出題なし)
地誌:出題あり
総合:出題なし

・32年度
基礎(地図:出題なし 気候:出題なし  地形:出題なし)
産業(農牧水林:出題あり 鉱工業:出題なし)
居住(人口:出題なし 村落:出題なし 都市:出題なし)
世界の結合(交通:出題なし 貿易:出題なし 国家:出題なし)
地誌:出題なし
総合:出題あり


 この大学の受験者はとくに次の点を留意して学習してほしい。
(1) 説明問題が出題されることを予想して要約した文章で解答できるようにしておくこと。
(2) これまでの問題をみると, 石田竜次郎著「人文地理」(実業の日本社発行)をテキストとして利用すれば有利であるようである。



「ばあい」、「 歴史そのものの流れやなどを」、「だいじである」、「へいそから」、「たしかめておけば」、「教科書, 参考書で整理された確実な知識とが」については原文の通りに入力した。




以下、私の考えを書いておく。

上記の文章を読んで、一橋大学に合格するために、世界史では、小学校・中学校・高校で学んでいることだけでは足りないように思ったかもしれない。

しかし、1960年(昭和35年)11月実施 旺文社模試では、一橋大学の合格者平均点の得点率は62.1%~64.7%であり、低かった。
駿台模試の話ではない。
問題が易しい旺文社模試なのにこんなに低かったのである。

したがって、難問を解くことができなくても合格できたことがわかる。

特殊事情がない限り、基礎ができてない者が難問を解くことができるわけがない。
それに英語・数学・国語がこの程度の出来なのに世界史だけが高校レベルを超えているのが当たり前というのは不自然である。
それに、年度については昭和33年度からほんの2年間しか経過してない。
この程度の年数で一橋大の人気が凋落したと考えることは不自然である。

それに、1959年度(昭和34年度)ごろの一橋大学の第2次試験の合格者最低点の得点率の目安も58%~63%程度であり、低かった。

年度については昭和33年度からほんの1年間しか経過してない。
この程度の年数で一橋大の人気が凋落したと考えることは不自然である。

そういう点からも、難問を解くことができなくても合格できたことがわかる。

以上より、小学校・中学校・高校で学んでいることを中心にして勉強していけば合格できたことがわかる。



このへんは
『旺文社模試(昭和35年11月実施)なのに東大文科Ⅰ類の合格者平均は7割未満だった。』(2020年1月16日)
https://supplementary.at.webry.info/202001/article_5.html
『昭和35年度一橋大学受験生向けの大学案内(合否の目安・就職状況)』(2020年1月4日)
https://supplementary.at.webry.info/202001/article_4.html
で述べた。




【1960年(昭和35年)11月実施 旺文社模試の合格者平均点】
一橋大(経済学部) 220点(得点率:64.7%)← 旧商大
一橋大(法学部) 216点(得点率:63.5%)← 旧商大
一橋大(社会学部) 213点(得点率:62.6%)← 旧商大
一橋大(商学部) 211点(得点率:62.1%)← 旧商大







【1959年度(昭和34年度)ごろの一橋大学の第2次試験の合格者最低点の得点率の目安】
(大学当局からは合格者最低点は非公表であった。しかし、当時の赤本(教学社)に載っていた「大学案内」の「合否の目安」に目安が載っていたので、それをもとにして私がまとめたもの)

商学部:504点程度(800点満点)(得点率:63%程度)

経済学部:504点程度(800点満点)(得点率:63%程度)

法学部:480点程度(800点満点)(得点率:60%程度)

社会学部:464点程度(800点満点)(得点率:58%程度)




なお、人文地理では

(2) これまでの問題をみると, 石田竜次郎著「人文地理」(実業の日本社発行)をテキストとして利用すれば有利であるようである。

と書いてあるので、この通りに 石田竜次郎著「人文地理」(実業の日本社発行)をテキストとして利用すれば良かっただろう。

せっかくだから、国立大学で個別試験に世界史があり、かつ、その大学の大学別模試の世界史の過去問集がある場合の現在の受験生におすすめの世界史の勉強法を書いておく。

① 実際に受験する予定の大学の個別試験の過去問と、その大学の大学別模試の過去問集を解く。
すぐに解ける問題は解き、そうでない問題は、すぐに、解答を見る。
高校3年の夏休みまでは、授業で進んだ範囲だけでよい。高校3年の夏休みに入ったら、高校の授業で進んでない範囲もこのように行う。
以下、このへんは同様であるので省略。
② 間違えた問題がかなり多いだろうが、これから覚えればいいと考える。
③ 過去問の解答・解説を見ながら、高校で使っている教科書の索引などを使って、教科書のどこを間違えたかを特定する。
そして、教科書のここさえ、知っていたら、正解だった箇所を、色鉛筆(色がついたペンでも可)で囲む。
教科書に該当する箇所がない場合は、ノートを作り、ノートに、その問題を解くのに必要な単語、または、文(または文章)を書く。
漢字・ひらがな・カタカナを書くことが必要な問題の場合は、漢字・ひらがな・カタカナを、計算用紙に書いて、練習する(小学校のときの漢字の書き取り練習をイメージして行う)。
なお、漢字・ひらがな・カタカナを書くことが必要な問題の場合は、教科書の該当部分を囲むときに、「W」(Writingの意味)とでも書いて、書き取りが必要であることを示しておく。ノートの場合も同様。

あとで、教科書・ノートを読むときに、記号問題で出題される箇所は読むだけ、「W」の印がついたところは、計算用紙で書き取り練習をするというように、時間を節約できる。
④ ①~③を繰り返して、個別試験の過去問と、その大学の大学別模試の過去問集を、最後までやる。
⑤ 世界史がある模試の2週間前から、教科書の色鉛筆で囲んだところ、ノートだけを読む。
このとき、漢字・ひらがな・カタカナを書くことが必要な場合(「W」の印がついたところ)は、もう1回、1通り、計算用紙に、漢字・ひらがな・カタカナを書いておく(小学校のときの漢字の書き取り練習をイメージして行う)。
⑥ 模試を受け終わった後、間違えたところは、同様に、①~③を行う。
ちなみに、この方法の場合、教科書を使うので、単語だけでなく、流れも覚えることができる。

日本史や世界史の場合、高校で使っている教科書を中心にして勉強すると効率的である。
なお、教科書に載ってなかったが、高校で使っている本(図説など)に載っていたときは、ノートに書くかわりに高校で使っている本(図説など)で上の勉強法を行うと効果的だろう。

なお、「西力東漸」については、次のブログ記事からの引用参照。




最近、あまり目にしなくなった四字熟語に西力東漸がある。西の力すなわちヨーロッパの文明が次第に日本に迫ってくることをいう。四大文明はおよそ同じ緯度で、起こったが、ギリシャ・ローマに発するヨーロッパ文明だけは、外へ外へと広がる力を秘めていた。多分いまもその延長線上にあるのだろう。




『松尾龍之介の「長崎日和」』の「西力東漸(せいりきとうぜん)」(2016年09月07日19:50 )
http://blog.livedoor.jp/ryunosuke1220/archives/8680876.html



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