大正時代のマラリア資料(19世紀の上海でマラリア流行など)・滅菌のない上水道で赤痢死亡?

第七 マラリアは どんな 方法で 予防すべきか

 マラリアの 予防には 下の 3方法が あって これらを 同時に 行うと ますます 有効で ある。

一、人体内に 潜伏する 寄生虫を 撲滅する

二、患者は 防蚊の 方法を 守る

三、蚊族の 駆除撲滅を 励行する


一、人体内に 潜伏する 寄生虫を 撲滅する

 およそ 伝染病予防の 原則は その 地方から 病原物を 除去すれば 病毒媒介者が あっても 伝染病患者が 発生し、また 、蔓延流行することは ないと いうことで ある。


この意味から マラリア原虫の 潜伏が あると 認めるべき 流行地の 一般人に 対し、キニーネを 数日おきに 反復服用させると たとえ ハマダラカが いても 他に 伝染させる 危険が ない。


なぜかと いうと 各人体内に 潜伏する マラリア原虫は キニーネのために すでに 撲滅されているからで ある。


以上が その地方から マラリア原虫を 駆除する 目的で あるから、この方法を やるときは 一村 もしくは 一大字 全体に 対し 一斉に 励行しなければならない。


個人的任意の 予防は 実績を 上げる 点に おいて 微力で ある。


よって 貧困者は 薬価を 無料と し、それ以外の 人からは 薬価を 徴収し 役場 及 医師、警察官は 指揮監督者と なり 衛生組合長は 実行斡旋者と なる 等 協力一致し 努力するので ある。


現に 台湾では 上記方法を もって 偉大な 効果を あげているので あります。


 また イタリアの 例に ならって 役場に キニーネを 用意し 実費で 分配するのも 有力です。

二、患者は 防蚊の 方法を 守る

 明治34年(1901年)、陸軍 衛生部は 台湾 基隆で 防蚊法に よる マラリア予防の 試験を 行い 卓効を 奏した。


本試験に おいて 非防蚊兵 707名の 内 251名が 患者と なった。


防蚊兵 150人からは 1名の 患者も 出なかった。


 その 防蚊法は 窓戸に 金網 もしくは 布を 張り詰め 1匹の 蚊すら 侵入させず、かつ 外出する 時は 防蚊覆紗で 頭部を 覆い 手足が 露出しないよう 足袋、手袋、股引 等を 使用した

(←夜間外出ならともかく、昼間の外出では、マラリア対策としては、無意味である。なぜならば、マラリアを媒介するハマダラカは夜間吸血性だからである。もっとも、デング熱対策としてだったら、意味がある)方法で ある。


この 意義から 患者は 必ず 日中でも 蚊帳内に おり また 健康者でも 午睡 仮睡などの ため 蚊に 刺されない よう 注意を なし 蚊 すなわち マラリア原虫という 思想を もって 専心 蚊族に 刺されることを 回避しなければならない。


蚊は 酒を 好むから 飲酒後 仮睡するのは 最も 危険で ある。


 自己が 蚊帳外に いるのは 衛生道徳上の 罪人であり、美しい心得を 持ってくれることを、予防上 切に 患者に 望みます。

三、蚊族の 駆除撲滅を 励行する

 夏に 蚊が いないと するならば 我々は どんなに 安楽でしょうか。


実際には、蚊が いるから 安楽ではない。


かの 蚊は マラリア原虫の 媒介者で ある 以上、衛生上 極力 駆除撲滅の 手段を 尽くさなければ ならない。


しかし 蚊の 駆除法と しては 未だ 理想的な ものは 少なく ひたすら 金と 時間を かければ 2, 3の 良い方法も ないわけでは ないが、この場合 そういう方法は 奨励しがたいのは 遺憾である。


根本的な 蚊の 撲滅法は 排水を 完全に することである。


しかるに 本郡は 概して はなはだしく 水が たまる地で 自然に 悪い 水が 貯留し(←たいていの種のハマダラカは、ボウフラのときなどは、やや清明な水で、繁殖するが、原文に、「自然的悪水貯留シ」と書いてあるので、忠実に訳した。汚い水という意味ではないはずである) 土地が 湿潤し 蚊の 発生に 好適なのは 衛生上、産業上 大いに 遺憾と する ところで、排水工事が 急務で あるのは 衛生上からも 認められるところで ある。


しかし、各人が 気脈を 通じ それぞれが 排水に 努力し 居宅付近の 乾燥に 心がけるならば 自然と 蚊を 少なくすることが できる。


蚊を 少なくするだけでも マラリア予防上では 効果が ある。


今 参考として 上海工部衛生局 公示 「蚊に 関する 注意書」を 紹介致しましょう。

蚊に 関する 注意

一、蚊は マラリア その他の 悪疫 伝播の 媒介を なすもので ある。

二、蚊は 溜水内で なければ 増殖しない。

 溜水が 少なければ、少ないほど、蚊は 少なくなる(←たいていの種のハマダラカは、ボウフラのときなどは、やや清明な水で、繁殖する。ただし、ハマダラカ以外の蚊の中には、汚い水でも繁殖するものがある)。

三、ボウフラ(蛹蚊)は 呼吸の 際 水面上に 浮遊してくるので、溜水には 必ず 一面に 石油を 撒布して これを 撲滅すべきである。

四、古鐘 古瓶、陶磁器が 破損したもの 及び 花瓶等には 雨水 あるいは 古水が 停滞腐敗するため ボウフラ発生の おそれが あるので これらは 庭園 その他 家屋 構内から 取り除き 塵芥内に 投入し 他に 搬出させるべきである。

五、水桶類、水瓶、水草鉢、花瓶 壷 その他 水器類で 廃棄しがたいものは 1周 1回 石油を 注入 あるいは 撒布すべきである。

六、花園内、水瓶類、泉水、水桶中に ある 水は 時々 これを 取り替えるべきである。

 花園 潅水に 用いる 水は 水道から 直接、使用すべきである。

 もし 直接、使用しがたいときは これを 貯留する 水瓶類は 1周 1回 石油を 注入するか、あるいは 水中に 蚊が 産卵できないように 完全に 蓋を 施すべきで ある。

七、動物の舎、鶏舎等に おける 給水は 時々 これを 取り替えるべきだ。

(←わざわざ、こんな指示があるということから考えると、この時代の人々は、汚い水で育ち、病気まみれのニワトリの産んだ卵を食べていたのだろう

八、下水溝 及び 雨桶は 常に 清潔に 掃除し 閉塞しないよう 常に 修繕を 施すべきである。

 常に 掃除しがたい厨房 排水管等は 毎週 石油を 注入すべきで ある。

九、泥土で 埋もれている 雨水桶 及び 湿地は これを 開掘 流通させ あるいは 灰殻を 敷設して 地ならしを し 池水溜等は まず 塵芥で 埋め その上を 土灰で おおうべきである。

十、泉水中の ボウフラは 魚類の 食物と なるが ゆえに 蚊の 発生を 見ることは 少ないが、もし ボウフラが 発生した 場合は 水を 注入する 以前に あらかじめ 毎週 石油を 注入して 掃除すべきである。

十一、家屋 及び その 周囲は 毎週 1回 検査を 行うべきである。

十二、不注意のため、小水器から 多数の 蚊が 孵化し そのために 近隣の 人々に 迷惑を かけることが あるのを 忘れてはいけない。


 
以上の ことを 実行するため 政庁では 外国人 衛生医吏 監督の 下に 相当 教育程度の高い 支那人を 雇い 日程に したがい 居留地内を 検査し 貯水を 発見次第 これを 放流し また 石油を 注入することは 必ず 毎週 1回以上 巡視した。


実に 本事業は 政庁 防疫事業中 特筆すべき 効果を 奏し、開港当時 マラリア流行が 著しかった が 今日では ほとんど 患者が なく 蚊も また 極めて 希少と なった(←南京条約による上海の開港は、1843年(天保14年)である)。昔日の 不健康地は 変化して 健康地と なりつつある。

と 聞く。


 要するに ボウフラを 撲滅するのは 蚊を 絶やす 唯一の 良い方法であり、蚊が なければ マラリアも ない。

上海で 使用した 石油は ロヂシンと 粗製 石油との 等分 混合液で ある。

灯火用 石油は 高価で あるから 粗製 石油 すなわち 重油を 使用すれば 幾分 経済的で ある。

1滴の 石油は 1平方尺の 水面に 広がり 降雨で、水があふれることなどが なければ 1ヶ月間は 有効で ある。

 蚊の 撲滅に 自然界の 敵を 利用するのは 最も 狡猾である(←天敵を利用して、蚊が絶滅した事例を聞いたことがないことを付け加えておく)。

人為的施設は 持久上 至難の ものだからで ある。

自然界の 敵とは ○×(←つぶれていて判読不能だったので、記号で入力した)、鳥類、トカゲ、鮭、カゲロウなどは 蚊を 食う 動物で ある。

また 蚊の 幼虫や 蛹(さなぎ)の 発生する 水中には ミズスマシ、マツモムシの 成虫や トンボ、カゲロウ等の 幼虫が いる。

これも また 蚊の 幼虫や 蛹(さなぎ)を 食うもので ある。

 魚類 殊に 小魚も 蚊の 幼虫を 捕食する。

例えば、金魚である。

ただし、金魚は 餌を やり 飽食させると 捕食力が なくなる。

最も 多く 幼虫、蛹(さなぎ)を 食う 魚は インドに 産する ミンノー あるいは パナマ運河付近に いる ミルリオンと 称する 1寸にも 足らない 小魚だが 日本に いないから 役に立たない。

 蚊の 性質を 知ることも また マラリア予防上 必要で ある。

マテソン氏の 実験では 蚊は 1里以上 隔てた 陸から 島に 飛行しない。

オスボルン氏の 観察でも 蚊は 1里の 距離では 風の 助けが なければ 達することが できない(←蚊は、風のあるところでは、飛行障害を起こす)。

特に ハマダラカは 飛行力が 弱く 遊飛の 範囲は 3, 400間(←1間:約1.8182 mであるから、約 545m~727 mである)で あると いう。

 蚊の 食物は 人畜の 血液ばかりではなく 植物の 汁液(雄は 血を 吸わない。

雄の食物は 植物の 汁液だけである
) 雌は 吸血するが これは 産卵の 必要からで 平常は 汁液で 生活する。

今 桃、梨、リンゴ、砂糖で 蚊を 飼養すれば 長く 生きている。

蚊は また 酒を 好み 酒気がある 台所に 集合し、あるいは 樹木、竹ヤブ等 陰のところに 好んで 棲息するから 樹枝を 伐採して 日光 空気の 流通を よくすることも 必要で ある。

 蚊は 晩春から 発生し、夏時 最も 盛んに なり 秋に 段々 減り 冬は ほとんど 発生しない。

もし 冬 台所、便所の 隅に 不活発な 蚊を 発見することが あれば これは 晩秋 発生の 蚊であり、そのまま 越年する。

しかし 越年の 蚊は 雌で あって 雄では ない。

 幼虫も また 越年する者で、冬季 水中に 発見するが 蚊の 駆除撲滅を 図るには これらも 多少、参考となる。


 上記は、『各地方ニ於ケル「マラリア」ニ関スル概況』(内務省衛生局保健衛生調査室編。大正8年)(国立国会図書館のサイトの近代デジタルライブラリーで閲覧可能)p 102~105の『「マラリア」(又名オコリ、ギヤク予防心得』(←群馬県が、マラリア予防撲滅事業として、65円の印刷費をかけて、1万枚、印刷し、群馬県 邑楽郡の住民に配布したもの。なお、印刷費は、群馬県 邑楽郡の町村の負債とした)を現代語に私が訳したものである。なお、これは、著作権の保護期間が満了しているので、転載自由とする。



 せっかくだから、大阪の浪速におけるハエとり週間に関する読者投稿欄を下記に引用する。

なお、投稿者の実名はぼかした。また、現代語の用法に直した箇所がある。なお、大阪府立中央図書館で入手したものであり、著作権の保護期間がきれているので、転載自由とする。

サンケイ(←今の産経新聞) 大阪版 市内版 昭和32年1957年)8月29日 木曜日 10面 私の 声



 さる 20日、

浪速保健所から

23日から 30日までの

ハエとり週間”に

ハエ 200ピキに つき

新世界 大映の 無料 入場券を 引き換える。


と いう 回覧板が まわってきました。


映画みたさの 子どもは 大喜び、

1日がかりで やっと 200ピキを とり、

24日 あさ、さっそく 保健所へ でかけた ところ

もう 締め切ったから。


と ケンも ホロロの 断りかた。


むろん 回覧板には 締切日など 書いてないし、

これでは 子どもに ウソを いったようで、

かわいそうです。

浪速区・T橋 みつ




 私たちの 手落ちから 大変 ご迷惑を かけ、おわび いたします。


実は 新世界 大映から

ハエに ちなんだ 映画を 上映するのを 機会に、

無料 入場券 300枚程度を 提供するから、

ハエとりコンクールを やっては。


と いう 話が あり、

あの 回覧板と なった わけです。


ところが、

賞品引換えの 始まった 23日 あさには、

700名以上の かたが

ハエを もって 行列する
さわぎで、

予想以上の 反響に、

私たちも ビックリしました。


この 770名ほどの かたには

入場券を わたしましたが、

予定数を はるかに こえたので、

23日 正午 ふたたび 回覧板で

入場券 交付 中止


を お知らせしました。


不徹底を おわびすると ともに、

職員の 態度が、

子どもさんの 心を 傷つけた ことを おわびします。

今後 コンクールを ひらく ときには、

十分に 賞品を 用意しますから、

失望なさらず、

ご協力下さるよう おねがいします。

浪速保健所・久保田 勉 所長



200×770=154000

であるから、

昭和32年の大阪の浪速保健所近辺には、

15万4千匹以上の ハエが生息していた ことがわかる。

参考として、現在の大阪市 浪速区の地図を載せる。



 ついでに、上水道の滅菌装置を使わずに、ろ過装置だけで、川水を給水した後、集団赤痢が発生し、死亡者2名を出した事例を下記に載せる。

なお、実名、詳細な住所はぼかした箇所がある。また、現代語の用法に直した箇所がある。なお、大阪府立中央図書館で入手したものであり、著作権の保護期間がきれているので、転載自由とする。

サンケイ(←今の産経新聞) 大阪版 昭和32年1957年)8月6日 火曜日 14版 9面
上水道の 汚染から
363人 岡山に 集団赤痢

岡山】 5日、倉敷 保健所から 岡山県 衛生部へ
3, 4の 両日、都窪郡 妹尾町で 町 全域から 40度の 高熱を 出し 下痢 吐気を もよおす 患者が 集団発生した

と 連絡が あり、調べたところ 吉備 上水道 =管理者 高木 ○(←つぶれていて、判読できなかったので、記号で入力した) 吉備 町長= に 加入して いる

妹尾町で 100人

同郡 福田村 50人

同 庄村 110人

同組合から 水を 買っている

吉備郡 真金町で 28人

吉備町に 33人

児島郡 興除村で 40人

藤田村 2人

計 363人が 発病、

うち

庄村、上東 国鉄職員 K保 H男さん(男性)の 長男 T之ちゃん(6ツ)と

興除村 手伝人 O原 T夫さん(男性)の 長男 M雄ちゃん(4ツ)が それぞれ 死亡した

とくに

妹尾町の 患者は 激しく

ほとんど 全戸
と いう 状態。

県 衛生部と 衛研では 係員を 派遣、水質調査を 行っているが、

約 1週間前 同 上水道の 滅菌装置が 24時間に わたり こわれ、

川水を ロ過装置だけで 給水していた
事実が わかり

これが 原因ではないか。


と みられている。

 県 衛生部は 5日 夜、倉敷、児島、総社の 3保健所と 県 衛研との 合同で 対策本部を 設け 防疫に 全力を あげて いる。

菌は 新型か

岩崎 県 公衆衛生 課長の 話

 
この 症状では ほとんど 赤痢患者だ。


と おもう。

菌が 弱い のが 特徴で

普通の 赤痢では 下痢を して 熱が 出るが、

この 場合、高熱が でて 下痢を しており、

新種かも しれない。





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